耳管開放症の説明と治療について
ここでは病気の説明や役に立つ情報などをまとめます。  文責:コナン・maru
【耳管開放症の説明】
●そもそも、耳管(じかん)とは....
●耳管断面
●耳管の機能
●耳管開放症になると・・・
●通常の耳管と開放耳管
●耳管内の流れ
●耳管開放症と難聴
●耳管開放症の治療
●自分で耳管を閉じさせる方法
●日常生活での注意
●医療機関・薬局の利用
●運動療法について

●そもそも、耳管(じかん)とは....
まず、耳は3つに分けられます。
@耳から鼓膜までを「外耳」(がいじ)。
A鼓膜から内部を「中耳」(ちゅうじ)。
B三半規管やカタツムリのような部分が「内耳」(ないじ)。
その中で、耳管は分類的には中耳に入ります。
普通の耳管は、ほどよく柔らかく閉じており、開閉の機能があるのが望ましいと言えます。
耳管の長さは大人の標準で約3.5cmです。
(耳管鼓室口から耳管咽頭口まで)

●耳管断面
耳管を断面に切り取ると、耳管腔内の下部ほどに多くの線毛細胞が存在し、上部ほどに線毛細胞は少なくなります。
すなわち、耳管は上部と下部で違った構造になっているのです。
線毛細胞の多い耳管下部は中耳側から流れてくる分泌物を排泄する役目を担います。
線毛細胞の少ない耳管上部は換気を行い、中耳内と外界との圧の調整に深くかかわっています。
この構造は重力を念頭に考えれば理解し易く、生体の名利に感心させられます。

●耳管の機能
@換気(調圧)
新幹線でトンネルに入った時に耳が詰まる感じがすると思います。
これは、気圧の変化により中耳腔(ちゅうじくう)=鼓室(こしつ)が陰圧になっている状態です。
その詰まった状態を耳閉塞感(じへいそくかん)または耳閉感(じへいかん)と言います。
この時、鼓膜は凹んでいます。
そうなった時に皆さんはどうされますか?きっと唾をゴックンとすれば、解消されると思います。
同時に、凹んでいた鼓膜も元の形に戻ります。
それは、耳管が正常に働いているからです。

A排泄
耳管の中は粘膜で覆われており、かつ分泌されています。
中耳(耳管含む)の異物を外に出す目的が主です。
耳管咽頭口(じかんいんとうこう)、鼻や喉に繋がっています。すなわち、鼻水などとなって排泄されるのです。
風邪を引くと過剰に分泌されてしまうこともあります。
そこで、もし、耳管が閉じたままであれば、中耳腔に粘膜液が溜まりまくって「滲出性中耳炎」という病気になります。
鼓膜は凹んで、難聴になってしまいます。
耳管の中には線毛(せんもう)があり、流れは耳管咽頭側に向いています。
あくびや、嚥下(えんげ)=(ゴックンです)の際に一気に耳管咽頭側に排泄されます。

B防御
これは、外からの侵入者を防ぐ目的です。
誰でも子供の頃に、中耳炎を患った経験をお持ちであると思います。
大人の耳管は、3.5センチ程あります。しかし、子供の耳管はまだ未発達で短く、それが為に、風邪を引いた時などに様々な、ばい菌の侵入を受けてしまうからです。
外敵からの侵入を防ぐために、通常は閉じているわけです。

●耳管開放症になると・・・
さて、一般的には、上記の3つで説明されていますが、この「防御」には、もうひとつの敵からの防御があります。
それは自分自身なんです。
「自分自身の声」や「呼吸音を聞いてしまう」..前者を「自声強調」(じせいきょうちょう)後者を「呼吸音聴取」(こきゅうおんちょうしゅ)「呼吸性耳鳴り」(こきゅうせいみみなり)ともと言います。
そして、この2つが、開放症患者にとっての最大の苦痛なんです!!
普通ならば、聞こえるはずの無い「自分の声」、「自分の呼吸音」が聞こえてしまいます。

耳管の開放により、鼻呼吸をすれば、耳管咽頭側と鼓膜までが開通してしまいます。(空気が行き来する!)
鼓膜も呼吸に連動して動きます。ペコペコ動きます。
うっとおしいとしか言いようがありません。
鼻呼吸をすると、ゴォーゴォー・・・もう、筆舌できません。
呼吸すたびに、ジャンボジェット機が頭の真上を通過する。
あるいは、共鳴の激しい狭い部屋で、大きな声でしゃべったりするもののと同じです。
(それは例えであって、これを実際に耳(頭)の中で聞くと言う際の辛さは表現が出来ません)
とにかく、どうしゃべったら良いのか分らない...大きな声でしゃべればしゃべるほど辛いです。
普通にしゃべっていても辛いのです。だから、小声になります。
しかし、そうする事によって、息苦しさを感じる方もおられます。
また、相手に対しても、しゃべっている自分自身の声がフィードバック出来ずに、どの程度でしゃべれば相手に理解されるのかが分りません。
寝ていたり、下を向いたりすると、一時的に楽になります。
これは、この状態になると生理的に耳管が腫れるためです。
耳管が腫れる=症状が緩和される。そのため、患者は下向き加減に話してしまうようになり、「消極的に話す。自信の無い話し方」のように誤解されます。

●通常の耳管と開放耳管
通常の耳管は全て閉じているのでしょうか?
通常の耳管は耳管鼓室口付近の一部と耳管咽頭口付近は、わずかに開いているものの、耳管の大部分を占める耳管軟骨部は普段は閉じています。すなわちペッタンコです。

まず、中耳腔から始る耳管鼓室口は太いが、急激に狭くなります(ラッパのように)。
耳管鼓室口から40%が「耳管骨部」で、硬い骨に囲まれており「耳管峡部(最も細い部分)」において、最も骨に囲まれます。
ここの断面積は平均で0.94mm2だそうです。
ただ、耳管骨部と言っても骨しかないのではなく、当然、線毛細胞(せんもうさいぼう)も存在し、中耳腔と同じく粘骨膜で覆われています。
また、耳管骨部の上には鼓膜から繋がっている鼓膜張筋(こまくちょうきん)が走行しており、聴こえのシステム異常を訴える患者の多くに、この鼓膜張筋と耳管開放症との関与が推察されます。
特に鼓室咽頭口付近においては耳管と特に密接に繋がっています。

耳管峡部から耳管咽頭口までが「耳管軟骨部」になり、耳管全体の60%を占めています。
耳管峡部より耳管咽頭口にかけて緩やかにラッパのように広がって行きます。
耳管咽頭口では、もうラッパの口のように大きく広がっています。

耳管軟骨部の外側には口蓋帆張筋(こうがいはんちょうきん)が付着しており、嚥下や開口、発声により口蓋帆張筋が収縮し、耳管軟骨部を開放させます。(耳管が開放する)
さらに耳管の下には口蓋帆挙筋という筋肉も存在しており、口蓋帆張筋に準じて開放に関与しています。

通常の場合、嚥下等の際、約0.3秒間、耳管全域が開放します。
そして閉じるのでありますが、耳管開放症を発症している場合は必要以上に開放し、閉じる時間が長くなります。
重症になるほどに、この開く断面積は広くなり、閉じるまでに時間を要し、患者を苦しめることになるわけです。
すなわち、自声強調、呼吸音聴取、耳閉塞感などの症状が生じます。
重症者に到っては閉じない方もおられます。

耳管軟骨部の横下には「オストマン脂肪体」と呼ばれる脂肪体(支持組織)も存在し、この脂肪体の減少(痩せ)が耳管開放にも大きく関与しています。
すなわち、縁の下の力持ち的存在である支持組織が、機能を発揮するだけの支持力(耳管を持ち上げて閉じさせる働き)を失ってしまい開放時間を長くしたり、開放耳管断面積を大きくしてしまいます。
また、耳管を囲む耳管軟骨自体の硬直も、穏やかな、柔らかい耳管の開閉の機能を妨げ、極端な開閉を行うと推定されます。
これも、開放時間を長くしたり、開放耳管断面積を大きくしてしまうことにも関与しているようです。
尚、一般的に耳管開放症として開放が顕著であるのは、この耳管軟骨部です。(重症者においてはこの限りではない)

●耳管内の流れ
耳管腔内の線毛運動は中耳側(鼓室咽頭口側)から耳管咽頭口側への一方弁です。
また空気も中耳側(鼓室咽頭口側)から耳管咽頭口側へは流れ易いが、その逆には流れにくいと言う一方弁のような性質があります。
これらは鼻水や鼻汁に伴うバイ菌の侵入を防ぐ目的ではありますが、これが逆に災いしてしまうのが「不完全型の耳管開放症=耳管閉鎖(機能)不全」であろうと思われます。
鼓膜所見では鼓膜の陥没が見受けられることから「一見すると耳管狭窄症であるが、実は耳管は開放している」と言う診断の厄介な耳管開放症の一種です。
このタイプの耳管開放症患者は特に鼻すすりは厳禁です。

●耳管開放症と難聴

開放症における難聴の解釈はいくつかあります。
いずれも低音域です。
また、難聴というよりは聞きづらいと言う方が適切であると言えます。
@自声強調や呼吸音聴取の音が邪魔をして 聞きづらい。
A鼓膜の過振動により異常な波動が伝導系統に伝わり聞きづらい。
B鼓膜の過振動のため中耳腔の中での伝導系統 において、卵円窓経由と正円窓経由がお互いに干渉し合い聞きづらくなる。
などです。


●耳管開放症の治療
耳管開放症は、軽症から重症まで、幅が広いです。
なった原因もそれぞれ違います。症状は皆違います。その人に合った治療法も、それぞれ違います。
漢方薬が効くのは軽症です。
耳管開放症はきちんと治療しても、全快しないことが多い、難しい病気です。
軽症では全快される方もいらっしゃいます。
重症では全快しなくても、治療で改善できます。
軽症例では生活指導、(痩せの予防.改善)など、漢方薬、 耳管を腫れさせる薬を塗る。
重症例では手術になりますが、例えば、手術で耳管に入れるピンのサイズにもいろいろあり、開放している大きさが違うということが分かります。
治療方法と効果を他の方と比べるのはあまり意味がありません。
自分がどのような症状なのか、医師によく診ていただいて、医師の指示通り治療をしていきましょう。
(開放症に詳しい医師にかかること)

2009年11月1日にテレビ東京で、耳管開放症について採り上げた番組が放送されました。

テレビ東京「話題の医学」
番組内容:耳管開放症への対応
出演者:小林俊光教授(東北大学大学院医学系研究科)

番組の動画は「東北大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室 耳管開放症外来」のページから見ることができます。


自分で耳管を閉じさせる方法
◆生理食塩水を使う
薬局で生理食塩水とスポイトを買って下さい。
※2005年4月の薬事法改正に伴い、生理食塩水購入には医師の処方箋が必要になりました。
自分でも作ることは可能です。
水道水を10分間煮沸した後冷やして作った水1リットルに食塩9gを入れれば出来ます。
蒸留水ではないので極微量不純物が混じっているでしょうが、普通の使用には問題ないはずです。


開放している方の鼻からスポイトで生理食塩水を入れます。
上を向いて、開放している方の耳を下にして、食塩水を入れると耳管の咽頭口に食塩水が触れて、耳管が閉じます。
一時的な効果ですが、耳管を腫れさせる綿棒に近い効果があります。
外出する時に小さな入れ物に食塩水を入れて持って行くと便利ですよ。

多くの利点があります。
@無害である。
A病院に行けない日や時間にいつでも自分自身で出来る。
B旅行などでも持ち歩き出来る。

生理食塩水についての諸注意は以下のとおりです。
@開封後の本体は冷蔵保存してください。(冷凍ではありません)
A携帯用の食塩水はその日の内に処分してください。
 さらに、使用後の携帯容器は、以下のスポイトの使用方法に準じて、清潔に管理してください。
B冷蔵庫から出してすぐ使うと、点耳薬がそうであるように、いったん人肌にあたためてから使わないと、
 「目まい」を起こしかねないので注意してください。(容器を握るだけです)
C使用前は必ず手を洗い、出来れば手を殺菌消毒してから使う。
D他人には一切、触らせない。
E使用量はスポイトに少量で良いです。(半分もいりません)
 不要な生理食塩水は口か鼻から垂れてきます(押し出される)。
F無害ですが、まれに合わない方もおられます。
 その場合は量を減らすか、使用を中止してください。

続いてスポイト&携帯用生理食塩水入れについての諸注意です。
@定期的に交換する。(なるべく早く)但し汚れたら即。
 (除菌クリーナーティシュタイプの常用も望ましい)
A毎日、食器乾燥器や熱湯消毒でメンテする。
B密閉された専用袋(封印できるタイプ)に入れて清潔に使うよう心がけてください。
C使用前は必ず手を洗い、出来れば手を殺菌消毒してから使う。
D他人には一切、触らせない。

◆スカーフ療法
これは文字通りスカーフやサポーターなどを首に巻き、頭部の血流を自分で調整して耳管を閉じさせる方法です。
スカーフを巻く圧力や巻き方など、自分にとって最も耳管が閉じるポイントを探し当てて調節してみてください。
頭を下げると耳管が閉じる人には効果が期待できると思います。


●日常生活での注意
◆水分補給は必須
複数の開放症の専門医が生活指導のひとつとして水分補給を早めに、しかも十分にとるように述べられています。
水分補給が十分でないと耳管内の粘膜が「スカスカ」になり粘り気がなくなり、空気が耳管内を交通し、最悪になります。
だから、水分は十分に取って下さい。


◆鼻すすりはやめましょう
患者のなかには、開放症の症状の辛さから逃れるための自己防衛手段として、鼻すすりをする人がいます。
これが耳管閉鎖不全の始まりとなるのです。
鼻をすすると、鼻咽腔が陰圧化し、それがために中耳腔も陰圧化する。
軽度の耳管開放症であれば、これで、開放症の症状から逃れられるために、これを意識的から無意識の状態でも
行うようになる。
「鼻すすりと耳管閉鎖不全」はこういう原理で成り立ちます。
尚、中耳腔が陰圧のため聞こえも悪くなります。

鼻すすりは止めてください。
一時的に楽になるだけです。
真珠腫(しんじゅしゅ)と言う恐ろしい中耳炎に発展するリスクを大きく抱えてしまいます。
耳管閉鎖不全から真珠腫性中耳炎に発展するケースは、ある有名な論文上では全真珠腫における統計では25%です。

但し、真珠腫は基本的に耳小骨から破壊し、何年もかけて徐々に奥へと進行していくものです。
急激に進行もなければ、内耳に突然に現れるものでもないはずです。

鼓膜所見で、はっきりと分ります。
鼓膜は陥没し、鼓膜に穿孔があれば匂う耳だれが外耳に出てきたりもします。
鼓膜に穿孔が無くともはっきりと分ります。白く..キラキラと..

それと難聴も伴います。伝音性難聴(中耳の難聴)です。
耳小骨に肉芽(にくが)が形成されて増殖します。

何年もかけてですが、中耳を破壊した上、内耳の蝸牛(かぎゅう)も破壊し「強度難聴」になります。
さらには三半規管も破壊され目まいに襲われ「平衡感覚」も失います。
また「顔面神経麻痺」も引き起こす可能性もあります。
それだけでも十分に恐ろしいですが、脳にまで達して、「髄膜炎」などにも発展します。

◆タバコはやめましょう
普通の人は、耳管は閉じていますが、開放症患者が開放状態にある時にタバコを吸うということは、ニコチンが耳管を通って鼓室内を循環して、中耳や内耳を痛めて、めまいや、耳鳴りや耳閉感を増強してしまいます。


●医療機関・薬局の利用
◆かかりつけ薬局、薬剤師
皆さんは、かかりつけの薬局や薬剤師を決めていらっしゃいますか?
結論から言いますと「決めてください」。場所は、どこでも良いんですよ。
例えば、
@自宅の近く
A職場の近く
などなど...
何のメリットがあるのかと言えば、例えば耳鼻科と内科で同じクスリがダブってないか?
かかりつけ薬局、薬剤師を決めておけば履歴が残っています。
だから、様々なアドバイスがいただけます。

よく処方箋をいただくと、その病院の近くの薬局を紹介されたり、ついつい病院の近くの薬局に行ったりすることがあると思います。
でも、薬局は自分で選んで良いんですよ!
一番信頼がおけ、気兼ねなく相談出来る(大衆薬との併用とか)薬局、薬剤師を自分で選んで活用しましょう。

◆処方箋の有効期間
処方箋の有効期間は、処方された当日を含めて4日間です。(土日祝含む)
よって、当日に行くのが望ましいのですが、どうしても4日以内に行くのが無理な場合、処方箋を書いて下さる医師に相談し、
処方箋の有効期間を伸ばしていただきましょう。
それが無ければ、薬剤師は4日以内にしか処方出来ません。
「今度で良いか」の期限は4日間です。ご注意を!

◆診察表のチェック と各種学会への理解
耳鼻科医の世界にも多種な学会があります。
その際、通常とはイレギュラーな休診日、または、主治医が休診されるケースがあります。
学会の予定は何ヶ月も前に決まっています。これは、医師の勉強会であり交流会です。
ここで、全国の医師が勉強され、情報の交換に頑張っておられます。
患者側には、不便な面はありますが、これがあるからこそ医療の発展があります。
注意すべき点は、その意義を理解していただき、早めに院内に掲示されている病院の休診日や医師の休診日をチェックしておくことです。
行ったら、「休診日で閉まっていた」は、最悪です。そういうことのないように...
また、休診の前後は大変、混み合います。可能な限り、情報は入手して予定立てましょうね。
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